光ラハの少しふしぎな話その2
「おや、こんなところでどうしたんだい?」
ラハだ。声の位置からどうやら隣にいるようだが辺りはすっかり暗くなっていてキョロキョロと見渡してみてもラハの姿さえわからない。
「いやぁちょっと散歩のつもりが道に迷ってしまったようでなぁ」
「まったくあなたらしい。ほら、こちらだよ」
くすくす笑うラハに右手を取られる。どうやら先導してくれるらしい。二人並んでしばらく歩く。ラハがぽつりと訪ねて来た。
「あなたはここが怖くないのかい?」
「どうして?」
「ほら、ここは真っ暗で何も見えやしないだろう?」
「あーそうだな。うーん、でも、ラハがいるから」
「おやおや、あなたはわたしを喜ばせるのが本当に上手だ」
繋いでいる俺の右手が揺れる。ラハが笑っているらしい。確かに灯りひとつない真っ暗闇でラハの姿だって見えなかったが、しっかりと握られた暖かな手だけは確かなものなのだと信じられた。
「ほらみてごらん、あそこが出口だよ」
どれだけ歩いただろう、そう言われて前を見ると光が見えた。ほっと息を吐いたその瞬間、するりと握っていたはずの手が逃げていく。驚いて隣にいるはずのラハの方へ振り返ろうとした時、どん! 強ち力で背中を押されて光の中へと躍り出た。あまりの眩しさにぎゅっと目を閉じる。
光ラハの少しふしぎな話その3
そして次に目を開いた時、そこは最初に違う道に入ろうとした場所だった。さっきまであれだけ暗かったのに今はとても明るい。太陽は路地に入る前と変わらない位置にいるようだ。どうやら時間もそう立っていないらしい。一体あれはなんだったんだ。立ち止まったまま首を捻っていると駆け寄ってくる人影があった。ラハだ。
「なんだ、あんたこんなところにいたのか」
「ラハ! え、お前さっきまで一緒に……」
「どうした? 狐につままれたような顔して。あんた大丈夫か??」
「……いやなんでもない。今から帰るところなんだ」
「じゃあ、一緒に帰ろうぜ」
不思議そうに首を傾げる可愛いラハはそういって俺の左手にその手を絡ませる。暖かく柔らかい手。ぎゅっと握り返すと隣のラハはひどく嬉しそうに笑っていた。
先ほど強く押された背中には柔らかい手の感触と、そしてまるで水晶みたいに硬い感触が残っている。
思わず振り返ってさっき出てきた道を確認すると、そこには道らしいものはなにもなくただ壁が立ちふさがるばかり。
もうここにきてはいけないよ
そんな声が聞こえた気がした。