ジョージ秋山『銭ゲバ』が偉いのは,作中最悪の加害者であり被害者である主人公・蒲郡にとっての最大の理解者が「公害問題に立ち向かう正義の作家」こと秋遊之助,という点なんだよな 創作物の中で作家(に近い存在)が出てくるとだいたい作品世界を俯瞰する特権的な位置に置かれていて鼻につくのだが(最近読んだものだとサラマーゴ『白の闇』やアトウッド『侍女の物語』,あるいは岸辺露伴でもいい),『銭ゲバ』ではむしろ銭ゲバにもっとも接近する存在として描かれている ここにジョージ秋山なりの美学があるのだと思う,観察者ではなく当事者として物語を生み出そうとする矜持がここにはある