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夫の転落死について
①事故②自死③他殺
のうち、③の「犯人」が「妻」か?という観点に限定されて物語が進む。
作中で示される物的証拠や現場検証の情報が少なすぎてイライラするが、いわゆる【事件解決モノ】でないことは徐々に解っていく。
いくつかの事実があり「この人は、こういう人間なのだから、こうしようと思えばできたはず」という理屈で事件のストーリーを紡ぐのが検察だとすると
「本人の人間性と、今回の事象は、関連すると断言できず、確実に実行した証拠もない」という理屈で容疑者を擁護するのが弁護ともいえ、この、どちらも決定的な断言ができず、最終的には裁判官や陪審員の【心証に訴える】法廷劇の様子は『ザリガニの鳴くところ』を連想した。
この作品の構造はとても複雑で、観客を物語の外側にいさせまいとする監督の思惑を感じる。【実体験を作品の内容に反映させている小説家サンドラの夫サミュエルが死んだ】映画を【サンドラとサミュエルという俳優が演じて】いる。実話にしろ、フィクションにしろ、起こったことに対して、人は自分の望むストーリーを重ね合わせようとする。そのうえで「観客が求めるもの=真実」を敢えて見せないラストはまさしく「藪の中」。

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この物語で意図的に排除されている、別の人物が事件に関与している可能性。作中唯一、証言を変えた人物。身近な存在を危険にさらした人物。あの行動の言い訳、まじ意味不明と思いながら観てた。ラストシーンの抱擁の奇妙なバランス、そしてサンドラは犬とデイベッドへ。スヌープは本気ですごい演技だった。ヴァンサンも不憫いとしい。暗い森、雪の中、複数言語で交わされる会話など、ちょっと『別れる決心』を思い出したりもした。

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