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うすらいの のさ〜

 これはまだ、彼が自分を子どもだと誤解していた時の話だ。
 お前を出したから、と献本されたロナ戦をぱたりと閉じて、私は彼へと向き直る。
「まだ冒頭だけだけど、面白かった。誇張と捏造と真実のバランスには目を見張るものがある」
「そう」
 けっこう褒めたつもりだったんだが……彼はそれだけしか言わない。そのひとみに喜びはなく、というより、事実を聞いただけのような。
「……でも、君はただでさえ九九九ものバカ野郎どもを倒してきたんだろう。わざわざ本にしなくたって、『ひっぱりだこ』なんだろう」
「べつに、名前を売りたい訳じゃ……、……いや、結果的にそうかもしれねえけど……」
「?」
 ようやくひとみに私を映して、彼はつぶやく。
「どんなに仕事を成したって、忘れられるかもしれないだろう。……ほんとうはほかにも有能で、メディアに好かれた退治人がいる。半分アイドル商売だからな、鞍替えなんていくらでもあるし」
「忘れられる……君ほど熾烈なひともいないだろうに、心配することかね」
「あるよ。あいつから俺に鞍替えしたヤツらを見て、実感してる」
「あいつ?」
 私の問いには首を振るだけにとどめて、彼はまぶたを閉じた。
「忘れられたくないんだ。それが『退治人ロナルド』で、俺じゃなかったとしても」

をいつかどこかに入れたいです まんまコピペしたい

「忘れられないためには、印象に残らないといけない。印象に残るには、退治だけじゃ足りないし……本を書くなら、ウケる話じゃないとな。ついでに、『自分もこうなるかもしれない』っていう恐怖から、被害が減れば万々歳」
「それでネタがほしいって突っ込んできたのか……」
「真祖にして無敵の吸血鬼。それだけ見たらいいネタだろ、どっからどう見ても」
「うむ。たしかに」
「ちょっとうれしそうにするな。いまのお前はそうじゃねえんだから」

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