私は55歳を過ぎた頃からかな、自分に権力があることに気づいたんだよね。私に対する子どもや若い人の態度に、敬意や恐怖が混じるようになったり、若い頃には、挨拶してもまるで私が存在しないかのように無視してきた近所のおじさんが、挨拶を返してきたり。ああ、権力ってこういうことなんだ、と思った。
権力を持っているっていうのは本当に楽で心地よいんだよね。
男性っていうのは、かなり若いうちからこういう扱いなんだろうな、とも思う。
で、自分も、最近近所の年長者とすれ違う時には緊張して挨拶しなきゃと思ったりするのに、子どもや学生の存在は無視していることに気づいて愕然とした。
その人が他の人から受けている視線や態度って本人しか分からない。
昔、職場の女性の先輩に「女性は、50歳を過ぎると生きるのが楽になる」と言われて、女性は若い方が優遇されるからそんなことないんじゃない?と当時は思ったけれど、これは本当だった。
あの性的な目線から逃れられるだけで、どんなに楽になったか。夜道やさまざまな場所で、いつ襲われるか分からないという、あの恐怖、緊張感から逃れられて、どれだけ生きやすくなったか。
あと、障害のある我が子と一緒の時の、あの視線。(でも、我が子が大人になった今は、割と温かい目で見られるようになったのは、我が子が大人になったからなのだろうか?それとも時代が変わった?)
さらに、脳性麻痺の人と一緒に歩いた時に受けた視線は、そういう視線に慣れた私ですら怯むものだった。