『ミュンヘン』(2005年)
パリオリンピックを観るくらいなら、こっちを観たらどうだ全人類よ。
スピルバーグの「どちらにも肩入れせずに報復の暗殺を続ける者たちの苦悩を描いた」との言葉に、嘘はないと思う。
少なくともこれを観て、イスラエル側の言い分をもっともだと共感することはない。
イスラエルVSパレスチナの問題を、オリンピック選手団皆殺しという凄惨な事件で目の当たりにしておきながら、なぜ人類はいまだにこの問題をしっかり学ぼうともせずに、「どっちもどっちなんでしょ」程度の浅はかな見方しかできないのか。
報復の皆殺しを命じられた者たちも人間で、ミスもするし、悩む。
ターゲットにかわいい娘さんがいる。
親切に話しかけられて会話する。
祖国を作る夢を、とことん聞く。
無残な全裸死体に、せめて布をかけて去りたいのに、仲間に遮られた。
どんどん心にひっかかりが重なり疲弊していく様子は、人間そのものだ。
相手が、心ある人間だと思うと、どんどん殺せなくなる。
「国の未来と平和のために殺した」とどんなに上司に暗殺を正当化されても決して納得できない主人公。どんなに殺しても結局後継が出てくるじゃないか、というセリフが、すべてだ。