アーミッシュのようなコンミューン。時代劇のような光景なのに、突如ポップな“daydream believer”が鳴り響き、2010年だと知る衝撃の演出。
保守的なキリスト教のコミュニティはもちろん、どの宗教団体でもあり得る「教義の歪み」。男性中心社会が教義を歪ませ、女性信者をがんじがらめにして自由と尊厳を奪う。
たいていの人が男性と神へのおそれゆえ口を閉じ、耐えるしかないと選択してしまうところ、作品中の女性たちは、そうはしなかったのが、ほんとうによかった。
子どもの安全を守ることが許されないなら、地獄の火で焼かれてもいい、と叫ぶサロメの言葉に落涙。
夫の暴力に耐えろと説得し続けた母親が、娘にきちんと謝罪したのも、よかった。
最後の最後、「赦す」選択をして残った母は、娘たちを「逃がした」。フランシス・マクドーマンドは表情一つ変えずに、たたずまいで私を泣かせる。天才。
男子をどうすればいい?という問いに、13歳にもなったら基本的にはもうホモソに染まりつつあるけれど、教育次第で非暴力な人間に育つことも可能だ(大意)という回答が、『これからの男の子たちへ』に通じるものがあって、よかった。書記役の彼は、あの後どうなったのか…。