半月が経ったので、ホラーアンソロジー『INITIATION』に寄稿した掌編「ガシャン」についてすこしだけ解題します。
テーマとして「通過儀礼」が挙げられているのを見て、下の一節を想起しました。
>通過儀礼について。
>*
>日常は本来脱出不可能なものである。といって、腰を据えるには到底耐えうるものではない。
石原吉郎「一九三六年以後のノートから」(『石原吉郎詩文集』講談社学芸文庫, p279)
通過儀礼は、だれかに共同体の構成員としてのかたちを付与することを機能のひとつに持つように思われます。しかし、それは裏を返せば、儀礼が失敗すると既存のかたちは維持されないのだとも説明できそうです。その不安定さは恐ろしさでもあり、他方、どこか遠くに解放感のようなものも感じることもできるように思われます。
石原吉郎はシベリア抑留を経験した詩人でありながら、詩にもっとも重要なものは、と訊ねられた際に「リズム」と応じたそうです。音楽や詩におけるリズムは、生における日常を指すように思われてなりません。では、かたち=日常を壊すためにはどのような表現が必要であるのか。ガシャン、という音をひとつの答えとして提示してみました。そういう掌編です。
以下のリンクからDLできます。
https://tr.ee/u7vV_mKlj2
【お知らせ】
『ユリイカ2023年12月号 特集=長谷川白紙』に論考「『エアにに』 言葉のオブジェクティビティ――テクスチャの豹と歌詞空間の庭を作る」を寄稿しました。
さまざまな制約をハックする運動としての作詞を切り口とした『エアにに』論です。よろしくお願いします。
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3875&status=published
あとこれも。「春と修羅」のポエトリーリーディング。
序(春と修羅より) / ナースロボ_タイプT, 汎用式概念 ろさちゃん https://www.nicovideo.jp/watch/so42905717
無色透名祭、とりあえず300曲くらい聴いたけどこれがほんとうに良かったです
0〜200m 表層(海と、その深さについて) / ナースロボ_タイプT https://www.nicovideo.jp/watch/so42901784
君島大空の新譜がとても良かったのでnoteを書きました
君島大空『no public sounds』とモアレ|青島もうじき
https://note.com/aojima__/n/ncba9a38c58bd?sub_rt=share_pb
記載論文SFを考えているのだけど圧倒的に分類学の知識が足りない
鳩、ちょうど二週間ほど前に思い至ったことがあるので書きたい
霧四面体の新曲、とても好き
雨音を無数の拍子を重ねたものと理解する発見からこの楽曲に到達するの、すごく素敵な創作の姿勢だ
「水門は閉ざされていたので、その周辺には遥かに多くの生物が棲み着いていた」
うたた寝をしていたらふと一文目が浮かんだので、掌編小説にしました。眠れないときのために。
青島もうじき「水蜘蛛と門」
https://note.com/aojima__/n/ne4f54e698998
作家。豆乳が好き。 『異常論文』(早川書房)、『私は命の縷々々々々々』(星海社)、『破壊された遊園地のエスキース』(anon press)など。