井戸川射子「島の成り立ち」(群像 2024年9月号)がとても良かった。人間の目は人間をとらえやすいようにできているので、あらゆる網目の結節点を人間であるものと感じてしまう傾向にあるのだろうけれど、場所(=島)を成立させているのは生物/非生物を問わないさまざまな存在である。それらはときに擬人化をされ、あるいはときにそれを拒み、影響関係によって互いを混淆させ、あるいは排他し、そうしてつねに境界を変じ続ける。井戸川は「風雨」(『共に明るい』)でも浮遊する視点から蠢く修学旅行生のかたまりを描いていたし、詩集『する、されるユートピア』にもそうした言語実践が多くある。寄せ集められたものたちの、糸を引くような総体が描写されている。