上野瞭
『現代の児童文学』
児童文学のなかで描かれる「あたりまえの世界」「ふしぎな世界」「おかしな世界」を糸口に、さまざまな作品を参照しながら「児童文学とは何か」を解き明かしていく。
かなり古い本(昭和47年)だが、「子供」のあり方を固定化し、彼らが成長し変化していく存在であることを否定して大人側の価値観を押しつけることへの鋭い批判は現代においても十分な説得力を持つのではないだろうか。ブックガイドとしてもおもしろく、ピアス『トムは真夜中の庭で』の解説は作品のさらなる魅力を引き出してくれたし、私の好きなバラージュ『ほんとうの空色』や、モルナール『パール街の少年たち』にも触れられているのも嬉しい。
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