ミシェル・パストゥロー
『図説 ヨーロッパから見た狼の文化史』
ヨーロッパにおける狼は想像していた以上に人間の暮らしと関わりの深い生き物だったのだなあ。古代から中世の狼のイメージの転換にキリスト教の影響があったというのはわかるけれど、そこには気候変動による環境の荒廃や疫病などが原因で、狼たちがそれまで以上の脅威となったという切実な背景もあったようだ。人々の暮らしが比較的安定していた12~13世紀には狼への恐怖心も幾分薄れ、その事実が文学作品にも反映されるいっぽう、再び疫病や戦乱が猛威を振るった中世末期から近世~近代には……というのも納得。狼に由来する地名や諺がこんなにあるのもすごい。
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