かばん11月号から月々3首選チャレンジ。
今月は「これ自分が詠めたい方向性!」という切り口で選んでみて共通点を探ってみる。
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すずしいね すずしい 囁きあった戸口で別れる前の時間を / とみいえひろこ
無闇に空けるのは好きじゃないのだけど、これは一字空けが効いていると感じる。
ふたりが互いに別れを惜しんでいて、けれど次に会う予定やこの後もう少しどう?みたいなことを言い出さ(せ)ないときのあの余白。あるいは「すずしいね」に対する頷きの1拍。「すずしい」のサ行の連続が「囁く」イメージと美しく合致する。
連作のタイトルは『長い八月』。夏の終わりの、浅い夜の景が鮮やかに浮かぶ。
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(続)
二拍子のリズムで手話が流れゆくノノワのスタバ緑の光 / 野川忍
ノノワ、JR武蔵境~国立にある駅ナカ商業施設で、国立のノノワには耳の聴こえる人と聴こえない人が手話を介して共に接客を行う日本初のスタバがあるそうです。あの一帯、まさに学生時代住んでたのに知らなかったな……(住んでいたのは10年以上前なのでノノワはまだなかった)。
……という情報を知らない状態で読んで心掴まれた1首。初見の印象だと外国の地名かと思った。
句跨がりの一切ない気持ち良い定型が「2拍子」のイメージと響き合う。そもそも私は短歌自体を2拍子だと思っているので、下の句の「ノノワのスタバ、緑の光」が手話と短歌を結びつける2拍子のリズムとして印象的に弾む。音を使って景と歌を結びつけるのが上手いと感じた。
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11月号からは以上。
共通点、「現実に根ざしているけど少し幻想的」「つぶさには説明していないのに景が鮮やかに浮かぶ」かなあ。あとは韻律を効果的に使っている、とか?
まだ己の方向性ふわふわしながらだけど、少しずつ自分らしさみたいなものも見出していきたい次第です。お粗末さまでした!