小林康治『四季貧窮』、読了。
こちらは「貧窮」がテーマなのだけれど、僅かに諧謔があり、興味深く読めた。跋で石塚友二が〈小林康治の「貧窮」は、作者のロマンチシズムの衣装かも知れないではないか〉と書いていて、「貧窮」というテーマを古語を使って優雅に描いているところもあると感じた。
月や火の色怒濤の如く雪降り来 小林康治
冬浜や暁かけて網干(あぼ)すなり
大寒やぼんのくぼまで老いにけり
欷歔童子まろびて出でぬ別れ霜
父の死の夜の雪と思ふ肩に頭に
父を焼くいま冬空へうす煙
寒の箸がほとぼる骨をはさみあふ
鼻寒し父の骨壺抱き温め
黴畳踏み立ち得なばまろびけり
木の葉髪念力ゆるみては病むか
十薬やつひにひとりの旅の尿(しと)
貧てふ文字鮟鱇のごと吊るしたし
燕旅の蹠のかなしさよ