星と星のあひだ深しや木犀にほふ 『雨』 篠原梵
星々の遠近は肉眼ではわかりにくい。何光年も離れた星と星が、肉眼では「隣の星」と平面的に把握されることも多かろう。星々を奥行きあるものとして、宇宙的に捉えられるのは知識があるからであろう。
掲句、その知識を〈あひだ深し〉と詩に昇華した。
作中主体は地上から眺めつつも、宇宙的な奥行きを捉
えたのである。木犀の花の強い香りが漂うことに、空間性を見出せるからこその発想であろう。嗅覚を使った身体的な実感が、知的なロマンと結びつき、詩情を
得た一句である。梵の命日は「木犀忌」という。