松本たかし『石魂』、読了。
夢に舞ふ能美しや冬籠
一円に一引く注連の茅の輪かな
箱庭の人に大きな露の玉
鎌倉の空紫に花月夜
眼にあてて海が透くなり桜貝
といった、いかにもたかしらしい雅な美感がある句も良いが、小品も愛らしい句が多い。
我が門の花に馬車止め訪ふは誰
花一木あり人これを四方より
別棟へ一人寝にゆく月見草
噴霧器の長き管這ふ薔薇の中
星涼し道に聞こゆる旅芝居
書を買ひて暫く貧し虫の秋
ただ、戦後は筆の衰えを少し感じた。たかしと言えば、茅舎とともに比喩が見所なのだが、戦後の比喩や擬人化には冴えがなく、やや読みづらかった。
『現代俳句大系 第九巻』も残すところ1/4というところ。
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