荒谷大輔『贈与経済2.0』(翔泳社、2024)、読了。
第一章から第三章までのジョン・ロック、アダム・スミス、ジャン=ジャック・ルソー、カール・マルクス、マルセル・モースについての読み解きは丁寧で勉強になった。
第四章からはブロックチェーンを使った「贈与経済2.0」について。ざっくり言えば、「贈与」と「感謝のトークン」を編集不可能なかたちで記録することで、「贈与」がまた生まれるという内容。しかし、このシステムを使いこなすには「健常性」あるいは認知的能力が必要であり、言語化能力が必要であると感じた。
「熟議民主主義の失敗」により、理性主義的前提を受け入れない人々の間で「分断」が起こっているのは、著者の分析通りだろう。
しかし、著者の主張する「対話」の形態、即ち「自分の価値観の前提を取り外した発言がより強い説得力をもつ」なるルールも、また能力による分断を生むだろうと思った。
これも「正しさ疲れ」からきているシステムの改変案なのだろう……。
#読書
金勘定で動く社会はやめよう、というのはわかる……。でも、社会は「ありがとう」だけでは成り立たず、「ありがとう」という能力と違う、批判的な精神/感覚を持っている人々がいる。「ありがとう」と言えない人を周縁化する社会は、違う地獄だと思う……。