小川軽舟『藤田湘子の百句』(ふらんす堂、2014)、読了。
藤田湘子の俳句は有名な句はいくつか知っていたが、こういう編年体的に追ったことはなかった(『藤田湘子全句集』(角川書店、2009)は永らく積読……)
湘子が「写生」という技法を見直す機会となった、3年間に及ぶ「一日十句」の期間の俳句が、個人的には好きだった。ただ、湘子も軽舟も、私とは違う「写生」観だなとも思った。作風は華麗で佳句も多いが、私の感覚としてはやや粗いかなと……(あと、やはり昭和的な「ジェンダー観」がかなり出てくるので、読むのにやや疲れた……)
オルガンはるおんおろんと谿の雪 藤田湘子
音楽を降らしめよ夥しき蝶に
口笛ひゆうとゴッホ死にたるは夏か
筍や雨粒ひとつふたつ百
うすらひは深山へかへる花の如
蠅叩此処になければ何処にもなし
藤の虻ときどき空(くう)を流れけり
芹洗ふ流れ三尺ゆきて澄む
両眼の開いて終りし昼寝かな
夏濤も影ひくころのジヤズ喫茶
凍蝶になほ大いなる凍降りぬ
あめんぼと雨とあめんぼと雨と
死ぬ朝は野にあかがねの鐘鳴らむ (無季)
あと、
柿若葉多忙を口実となすな
湯豆腐や死後に褒められようと思ふ
ゆくゆくはわが名も消えて春の暮
冬晴やお蔭様にて無位無官
などは、俳人の業を感じて、切ないなと思った。
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