ジョセフ・ヒース/栗原百代訳『資本主義が嫌いな人のための経済学』(NTT出版、2012)読了。
資本主義に対する一般的な誤解を解き、より客観的な視点から経済を考えることを目的とした入門書。 資本主義は自然ではなく、 市場経済は、政府の介入や制度なしには機能しない。インセンティブが全てではない。人々は経済的な報酬だけでなく、他の動機によっても行動する。競争は万能ではない。過度な競争は、市場の効率性を阻害することもある。左翼や右翼のどちらも、資本主義を誤解している側面がある。要約するとこう。
各章で、経済学に関するよくある誤解を取り上げ、それらがなぜ誤りであるのかを具体的な例を用いて解説。例えば、市場の効率性、所得格差、企業の社会的責任など、現代社会で議論される重要なテーマについて、経済学的な視点から考察している。
「保険」の考え方や、「モラルハザード」についてなど、重要な視点があり、興味深かった一方で、冷笑的で、嫌みな筆致がところどころ出てきて、金持ち自慢もあった。環境問題、特に資源が有限であることについては、都合よく無視している印象を受けた。
面白くはあったが、不快な部分もある本だった。
#読書
トマ・ピケティ原作/クレール・アレ&バンジャマン・アダム/広野和美訳『マンガで読む 資本とイデオロギー』(みすず書房、2024)読了。
ジョセフ・ヒース/栗原百代訳『資本主義が嫌いな人のための経済学』(NTT出版、2012)の歴史性のなさで読後が気持ち悪すぎたので、ピケティの本を。資本主義の歴史がざっくり読めて、復習になる。ヒース論は、ざっくり言えば「平等で皆が貧しいより、不平等でも総体として経済成長できればいい」というもので、だが、底上げもされてないよね、という話がピケティ論にはある。
資本主義を超克するにはまだまだ課題が多いし、ピケティ案はヒース論から行くと人々の善良性を信じすぎているとも思った。両方を読んでおけて良かったと思う。
#読書