小野寺拓也・田野大輔共著『検証　ナチスは「良いこと」もしたのか？』(岩波書店、2023)読了。

〈実際、ナチスの個々の政策を詳細に検討していくと、 一見先進的に見える政策も様々なまやかしや不正、 搾取や略奪と結び付いていたことは明白であり、 本書で説明してきた通り、近年の研究ではそこにナチズムの犯罪的な本質を認める見方が定説化している〉
「民族共同体」をめざすナチの包摂と排除。この結論にたどりつくまで、俗流意見をひとつづつ検証していく。内容に対して検証方法が洗練されていて、エレガントだとさえ言える。が、辟易しながら書いているだろうなということも伺える。専門家としての責務によってこういった優れた入門書が書かれることは、一般人としては実に有り難い。
歴史には〈事実〉〈解釈〉〈意見〉の三層があり、歴史研究が積み重ねてきた膨大な知見であるのが〈解釈〉である、ということもよくわかる。
「ナチスは良いこともした」と言いたくなる背景には、反-ポリコレがあるという考察も鋭い。

なお、「あとがき」の初出が以下で読める。
新書の役割――「ナチスは良いこともした」と主張したがる人たち（田野 大輔） | 現代新書 | 講談社（1/5）
https://gendai.media/articles/-/84256?page=1&imp=0

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