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國分功一郎 著『目的への抵抗―シリーズ哲学講話―』 (新潮社、2023)読了。

〈自由は目的に抵抗する。自由は目的を拒み、目的を逃れ、目的を超える。人間が自由であるための重要な要素の一つは、人間が目的に縛られないことであり、目的に抗するところにこそ人間の自由がある。〉
冒頭のこの結論に向かって論が進む。

第一部。COVID-19禍、世界的に「例外状態」が敷かれるなかでのアガンベンの社会批判「生存のみに価値を置く社会」「死者の権利の軽視」「移動の自由の制限」について、疫禍以前から現代社会に内在していたために、制限が易易と受け入れられたのではないか。「三権分立」は三権に等しい権力があるわけではなく、司法権が最も弱く、現代では現場で駆動する行政権が非常に強くなっている。「スピーディーで効率的なガバナンス」という言い方で例外状態が肯定されかねない、と警鐘を鳴らす。

第二部。「不要不急」と結びつく「必要」という概念は、必ず何らかの「目的」と結びついている。目的をはみ出るものを許さない論理の支配は、消費社会の論理を継続するために広がっている。しかし、行為は目的を超越する限りで自由なのだ。人間の自由は広い意味で贅沢と不可分だと主張する。

『暇と退屈の倫理学』を深化しつつ、平明な話法をとっている。

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