義理の前にあいつに本命を渡してくれ 

その日ハーレはやけに混雑していた。
「ナナリー」
「殿下!所長に用事ですよね?今案内します。あとこれもどうぞ」
そう言うと綺麗に包装してあるお菓子を手渡された。
「チョコレートか?」
頷いたナナリー曰く、バレンタインという外国のお祭りを真似て、訪れた人全員に義理チョコを配っているのだという。
なるほどと頷いてから、はたと思う。俺があいつよりも先に受け取ってよかったのだろうか。
この気のいい友人は恋愛事には大変疎く、それにいつも振り回されている従兄の姿を見てきた。お節介かと思いつつ、義理の前にあいつに本命を渡してほしいと言おうとして口を開く。
「ナナリー、あいつに…」
その時入口の鐘がカランと音を立てた。碧色の瞳が流れるようにそちらへ向けられ、それから頬がじわりと赤く染まっていく。
「遅くなってごめんね。お昼食べに行こうか」
金髪の合間から覗いた赤い瞳のなんとも優し気なこと。他の女性に対してとはまるで違う姿に、俺の杞憂だったかと内心苦笑する。
「待って。殿下を所長室に案内してくるから」
「俺のことなら気にするな。…本命、渡すんだろ?」
密やかに耳打ちすれば、耳まで真っ赤にしたナナリーだったが、僅かに頷いたのを見て、笑ってしまった。恋は人をも変えるのだなと。

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義理の前にあいつに本命を渡してくれ 

「流石67推しの0!」と思わず言ってしまいました。0視点のお話が読めて嬉しいです……!
6を見つけた瞬間の7の反応も、0に耳打ちされた時の7の様子もとっても可愛くて……!67それぞれへの態度がやわらかくなってるのに関係性の変化が分かって :toutoi:
最後の一文がとっても好きです!

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