樋口美紗緒『王を統べる運命の子』 全4巻
「やはりこのフォーマットは人気があるのかな……」の感想が第一。あわれで健気で無理解と理不尽の中にいた自己犠牲精神の強い受けが、やがて理解を得てみんなの中心になり愛されていくストーリー。
攻めたちは「雄感」は強いのだが、ひねくれに捻くれていて、でも中身は受けにデロデロに甘く一途で蒸気を逸しているほどの「愛」がある。お互いの強すぎる「愛」ゆえに試される2人、その2人にとっての「愛」の形とは? ……みたいな。
単純といえばそうだが、恋愛ものでのこのフォーマットってやはり普遍なんだろうなと思う。
常であれば、正直ほとんど興味ないそのフォーマットであるにもかかわらず「めちゃくちゃおもしろかった……!」と読まされてしまうのが樋口美紗緒作品なのだが、この作品はそこまでだった。
そこまで、など言いつつ2日で4冊読了してるゆだから、いややはり読み耽っているな。おもしろかったです。
死んだと思ったら増えてたの「?! ……?!?!」となった。
なお私は「ユリウス」が好きです。モードというか。地味で不器用で友達作りすら下手か! みたいな攻めくんのポンコツはかわいい。
好みのフォーマットではない、のだけど、カタルシスがあるというのは間違いなくて……
受けの誠実と健気が、ちゃんと報われるということ。
現実だと、報われることってなかなかないし、気づいてもらえないし、理解されないし、気づいて理解されたら「こいつはほういう扱いをしても良い」存在と見做されて、自己犠牲を伴う誠実や献身は、今度はそれが当たり前のものとして消費されるようになる。
それをしないことが、怠惰で傲慢なわがままで、「なんでしてくれないの? ひどい、やなやつ!」なんて扱われたりする。
誠実が理解され報われる、というのは、理想的なファンタジーで、誠実を踏み潰されることが常である日々を知るものには、やはり、抗いがたいものがあるよ……