「サンダカン八番娼館 望郷」のネタバレを含みます
「サンダカン八番娼館 望郷」(1974)を今更ながら観た。
元からゆきさんの老婆を演じるのは田中絹代。役の説得力どころかその人間の実在を感じる…あの信憑性を出せるのはなんなんだ。それからサンダカンの女たちの元締め・おキクさんが静かながら貫禄のある演技で良かったので役者を調べたら水の江瀧子だった。そりゃ良いはずだ…。あと夜這いの場面は描写が本気すぎて嫌悪感しかなかった。あの気持ち悪さをくまなく出せる山谷初男もすごい。
着物を作らせたり何か買わせたりして娼妓を借金漬けにして囲い込むのは有名な話だが、楼主・呉服商と娼妓たちのシーンは印象的だった。楼主が呉服商に、昭和の大典に合わせて全員分の黒紋付きを仕立てさせるという場面だが、搾取の構図のトップに天皇がいることを示唆しているような気がした。
にしても十数年ぶりに帰郷した妹に「外聞の悪かとたい」と言い放ち、妹からの仕送りで建てた家を取られないか疑っている兄(とその妻)…。誰のおかげで暮らせてると思ってんだとキレそうになった。感謝して欲しいなんて微塵も思わず、ただ久々に兄に会えて嬉しい位だっただろうにあんなに悲しいことないだろ。
主人公に対しては研究倫理大丈夫なんか…と思ってしまったが、全体的に良かった。