#音無静の世界線 犬化パロ注意
ある日透君が音無の部屋へアルバイトの一環で通い妻しに行くと、部屋にいるはずの人はおらず、代わりに灰色がかった白い毛並みの大型犬(ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ)がいるものだから。
スーパーで買ってきた惣菜や飲み物の入ったビニールをドサッと落とす透君。
それを見ても犬(音無)は『なんだ、来たのか』くらいにしか思ってないので、一度ベッドの上で顔を上げるんだけど、固まってる透君を見て興味なさげに頭を下げる。
#音無静の世界線 犬化パロ注意
「あ、でも〇〇ナンバーの車と、〇〇地区には行かないようにね。
危ないから、なるべく家の周囲にいるんだよ。
それといつもの繁華街方面に行くと急に走り出すかもしれないから。
昼間に散歩するのはいいけど、夜はなるべく近づかないように。
本気で引っ張られたら大怪我じゃすまないからね。
あと音無君のスマホに電話がかかってきても全部無視でいいから。
むしろ今のうちに電源落としちゃおうか。
僕からの連絡は全部無視君の番号にするから、君も音無君が元に戻るまでは事務所に電話しないように。」
所長が全く驚かないことにも驚いたけど、対応が手馴れすぎてはないだろうか?
それに特定ナンバーの車に気をつけろって、一体どういうことなんだろう?
思わずベッドの上の大型犬を見たけど、音無さんらしいその犬は興味なさげに目を閉じていた。
#音無静の世界線 犬化パロ注意
「......本当に音無さん?」
電話が終わってもまだ目の前の現実が信じられず。
ベッドの上に伏せる大きな灰色の犬に向かって彼女の名前を呼んでみる。
それに犬は閉じていた目を開いて、黒い石のような瞳で俺を見た。
やっぱり音無さんなんだろうか。
「音無さん」
『ヴゥ...』
返事だろうか。
普段の彼女よりずっと低い唸り声。
「でも吠えたり微動だにしないあたりは音無さんっぽいかも。」
『ヴゥ...』
「.........音無さん。お手。」
試しに右手を差し出してみる。
音無さん(仮)は如何にも呆れたという顔をして俺の顔と掌を見比べた後、酷く面倒くさそうに右手を伸ばしてくれた。
てし、と乗せられた犬の肉球は想像していたよりずっと固くて、ゆっくりとした動作に反して重い。
やっぱり大型犬だから?
犬の前足に彼女の手を重ねられるほど、じっくり見たり触れたりする機会は無い。
でも彼女の手が身長に似合った大きさをしていても、全体的に不健康な白さをしている皮膚や細い指先を思い出すと、この犬の前足も気持ち細っそりしている...ような気がする?
#音無静の世界線 犬化パロ注意
誰に話しても冗談としか受け取られないだろう。
だが咄嗟に目の前の光景を電話で報告した相手は透の話しを否定せず、少し困った案件に指示を出すようにゆったりとした口調で答えた。
「あぁ、まぁ......。うん、驚いただろう。
念の為に聞くけど、その犬は音無君で間違いない?
右の脇腹に傷がある?
結構。
なに、数日もあれば元に戻るさ。
悪いがその間面倒をみて貰えるかな?
まずはペットショップへ行って、大型犬用のリードとトイレと、あぁ、ドッグフードも忘れないように。
確かドライフードや干し肉が好みだったかな?
費用は後で音無君に請求するから、レシートは必ず受け取るようにね。
手持ちが無ければ僕のほうで立て替えるから、一度事務所へ来なさい。」
そんな適当でいいのか。
慣れたような所長の対応に思わずそう言えば、音無と透の雇用主は大丈夫だよと安心させるように笑った。
「なりは犬だけど、頭の中身まで犬になったわけじゃないから心配はないよ。
少し本能的になることはあっても、君を噛んだり襲ったりすることはまずないさ。」