死語について考える機会があったので、以下つらつらと、思い付くまま書き出す。

地震学コミュニティではあまり使われなくなった用語として近年は:
311後→「アスペリティ」
熊本地震後→「余震」(気象庁は一切使用しなくなった)
--があった(アスペリティ忌避派と、アスペリティ理論はまだ死んでない!派があるようだが)。

ああ、あと「プレスリップ」か。
東海地震説を基にした旧大震法が終わったのに伴って、ほぼ聞かれなくなった。※南海トラフ大地震に置き換わり、その発生には多様性があるなどとして。

地質学分野だと何があっただろう。挙げるならグリーンタフとか?

近年というかだいぶ前だけど、洪積世、沖積世という言葉が国際規定に合わせて死語になったのに伴い、地理分野の「洪積台地」もほとんど使われなくなった。

あとは「フォッサマグナ」とかかな(科学者コミュニティの外では使われているようだが…(^^;)。
それと「氷河期」とか。

それから、「始原山岳」や「二次山岳」。
新生代の第三紀と第四紀の言葉の基となった用語(Arduino, 1760年)だったが、層序の実態に合わないことが分かって使われなくなった。
第三紀と第四紀は用語として残ったので、この数字が何のカウントかパッと見でよく分からないという事態になっている。

逆に新たによく使われるようになったのは「スロースリップ」「粘弾性緩和」、ほか何があるかな。600年に1度のプレート境界を説明する言葉として、311直後は「スーパーサイクル」もよく聞かれたけど最近はあまり耳にしない。
南トラ地震の「半割れ」ケースとかかな。

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アスペリティの用語が避けられるようになったのは311から。しかし、一概に死語だとも言えないところがある。

あの地震では海溝軸付近の超浅いところまでずるっとすべったにもかかわらず、浅い場所で強震動が生成されなかった。
つまり、すべり量大の領域と強震動生成域が一致しないという実例になった。

それまでアスペリティは大すべり域、強震動生成域、応力降下量大の領域が一致するとの解釈のもと、政府の地震本部では「震源断層の中で特に強い地震波を生成する領域で、すべり量が大きく応力降下大の場所」の意で使われていた。

311後は強震動生成域と区別するため大すべり域などの用語が使われている。

ただ、研究者によってアスペリティの使い方に違いがあることは確かで、議論の際にはまず、その人の用語の定義など前提を確認することが必要と感じる。

例えばROISのM先生にとっては、アスペリティは地震本部の(昔の)意味と完全一致ではないだろう。多数の地震が起きる領域中の、相対的に強度が高いエリアとして用いているのではないか。

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