「ジルコニア」 ※清さに
人は死んだらどうなるのか。
そんなこと、考えたくもなかった。できるだけ考えないように、今隣にいる事実だけを噛み締めて、今日まで生きてきた。
だけど今答えが出た、出てしまった。
肉は焼かれ骨になる。
あのたなびく煙に、あの人の心があるのか。
清光にはわからない。わかりたくもない。
なんて小さな箱。清光の両腕に収まった骨壺が、かつて身体ぜんぶで受け止めたあの人だとは到底思えなかった。
粛々と列は進む。
あとはこれを墓に納めるだけ、という段になって、はじめて清光は感情を見せた。
嫌だ。嫌だ、嫌だ。
ぜったいに離さない。
お願い、俺からあるじを取らないで。
「ジルコニア」 ※清さに
泣いて暴れる清光を、仲間たちは止めることができなかった。清光が、そして主が、どれだけ互いに想い合っていたか。それなのに結ばれることなく、主は儚く世を去った。それらの事情を知っていて、一体誰が清光を宥められたというのだろう。
皆一様に俯き頬を濡らす中、進み出たのは初期刀だった。
大丈夫だ。誰もお前から、主を取ったりはしない。だがそのままというのも、主は嫌かもしれないだろう?
静かに語りかける声に、少し落ち着いたのか、清光が顔を上げた。
主はすっぴんを好まなかった。
しゃくりあげながらも、涙の下で清光は笑った。
…そーだね。あるじ、恥ずかしがり屋だったしね。
だからこうしよう、
初期刀が骨壺に手を伸ばす。一瞬ためらったのち、清光はそれを手渡した。
迷いなく紐を解き蓋を開けた彼は、一番大きな欠片を清光の手のひらに乗せた。
残りは墓に納める。だがこれは、お前のものだ。
…いいの?
誰も声を上げなかった。静かな同意が満ちていた。
宝物のようにそれを捧げ持ち、うっとりと眺めた清光は、痛ましいほどの笑顔で彼の主に頬ずりをした。