“お祖母ちゃんはゆっくりと丁寧に、
「帰ってどこが嫌なんかよう見とき。観察すんねや。家の研究いうてもええわ。ほんまに嫌なもんと、そこまで嫌やないもんをちゃんと分けんねん。好きなとこが見つかったら儲けもんや。そんでよう覚えとき」”
(澤村伊智『ししりばの家』より)
比嘉姉妹シリーズの三作目の舞台は幽霊屋敷だった。
家というプライベートかつ閉鎖的な空間で、人が狂うことはままあると思う。ひとたび家に入ればその家の常識とルールが存在する。その危うさや怖さを、怪異と人間の両方から書いたような作品だった。
普段あまり意識することはないけれど、家の数だけ無数にそういうものがあるのだとハッとする。隣の家がどうなっているかなんて、意外に知らないものである。
引用したのは優しいお祖母ちゃんの言葉。
帰る家がなんとなく心地よくないなんて子どもの頃はよくあることだと思うのだけれど、こうやって子どもを守りながら、意見を押し付けずに自分で考えさせようとする大人が身近にいたら心強いだろうなぁと思った。このお祖母ちゃんに対するあたたかい気持ちが伝わってくるシーンが切なかった。
わたしは怖がりなので肝試しは考えただけでものすごく苦手で、断固拒否する姿勢。なぜなら自分の足で歩いて行かなきゃならないから!絶対前に進めない自信がある。
本作では、幽霊屋敷の中を一歩一歩慎重に進む恐怖が伝わってくる仕掛けが施されていた。気づいて思わずニヤリとしてしまったし、表現としてぴったりハマっていて粋だった。
すべて家の中で起きる怪異なので単調になりがちだと思うが、そういった工夫もあり楽しめた。
頭に映像が浮かんできてすらすらと読みやすく、特に「ししりば」という謎の存在の正体にせまっていくシーンが良かった。
一作目の「ぼぎわん」も二作目の「ずうのめ」も、聞いたことのない文字の連なりが恐怖を煽るところがあって、さらにひらがなであるのが禍々しさを増している気がする。言葉の意味がなんなのかを知っていくのが、わたしのなかでこのシリーズの楽しみのひとつになってきている。
比嘉姉妹のファンとしては、姉の琴子が活躍する内容なのが嬉しかった!
返信
@rkwis 事実は小説よりも奇なりみたいな事件が現実にいっぱいあるから、小説だけど人間パートはリアルでしたね
本来なら違和感もスルーして終わりなのに、この場合終われないから怖いですね。女の子が生きていたのが怪異よりも不可解で怖い!
肝試し無理ですよね……小説のなかの小学生たち、正気か?!と思いました。
わかります〜乗り物なら耳をふさいで目をつぶっていればなんとかなるみたいなとこありますが……
風船葛さんの感想読ませてもらったんですけど、犬を呼ぶとこ最高でしたよね。賢くて頼もしい相棒!あれが個人的に一番盛り上がったシーンでした
やはりお家には番犬が必要なのです