ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』読了、少しネタバレ…なのかな?
波瀾万丈な人生から、さまざまな側面を切り取ったような短編集。
ここでの紹介で知りました、ありがとう!
各短編におそらく著者自身らしい女性が登場するが、「わたし」と述べる短編も多い一方で、三人称のものもある。したがって、読み進めていると「あれ、もしかしてこの登場人物が著者?」と、途中で察したりもする。
では、全体を読んで総合すると何となく人物像が見えてくる…のかと思いきや、これがまた、そんなことはなかった。上流階級の娘だったり掃除婦だったり先生だったり母だったりアルコール依存症だったりで、まったく把握しきれない。こんなことがあって、次はこうなって、といった繋ぎの説明や言い訳的なものは一切なく、スパイスの効いた筆致で大胆に一つの瞬間だけが描かれる。そこが良い。
読んでいると、一つの短編で一部がちょっと見えたような気もするけれど、全貌はまったく掴み切れず、むしろ想像が膨らむ。こじんまりとまとまった人物像などにはならず、抑えつけられてもどこまでも広がっていくような鮮やかな彼女のイメージが残り、不思議と惹きつけられる。
フィクションを交えつつも、リアルな一瞬一瞬を切り取るように描かれた短編の集まりは、生きた証のようにも思えた。
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