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壺井栄『二十四の瞳』
子どもの頃に読んで以来、何十年ぶりかの再読。

岬の小学校の十二人の生徒達と、新任の大石先生との交流から始まる物語。この小説の発表が1952年、作中の時代はさらに前の昭和初期から始まるので、昔の話だなあという時代の違いはもちろん感じる。
が、序盤の一年生の子どもたちのかわいらしさは変わらないし、戦争に翻弄されるそれぞれの人生の悲しさも変わらない。

また、先生自身の子育ての部分も印象的だった。はじめてのランドセルに大喜びで駆けていく無邪気な我が子を見て、先生が「その可憐なうしろ姿の行く手にまちうけているものが、やはり戦争でしかないとすれば…」と物思うシーンがある。先生は、自由な発言ができない中でもその思いを抱きつつ息子を育てたことだろうが、息子は後に、父の出征を誇りに思い、戦死したときにはもちろん悲しみはするものの「名誉」にも思い、内心で母を恥じさえもする。
とても優しいいい子なのに、ただ、幼い頃から平和を知らず育ってきて、それがあまりに当然になってしまっている。それが大石先生という母の目線で描かれるのが、とても悲しく思えた。

そういったことは今も世界中で起こっているのだろうし、私達だって他人事ではない。本当の意味で、この話が「昔の話」になってほしいものだと強く思う。

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