リチャード・オスマン『木曜殺人クラブ』読了。
過去の事件をネタに「木曜殺人クラブ」というお茶会を開いていた高齢者施設の住人たちが、実際に起こった殺人事件の捜査に乗り出す、という話。
お年寄りが活躍するほのぼのワクワクする話かと思ったら、もちろんそういう部分は多数あるのだが、それだけではなかった。
「クラブ」初期メンバーの一人は既に重度の介護棟で寝たきりになっているし、今の主要メンバーの一人は、やや記憶の混乱しがちな夫が自分とチェスを指す頻度が下がっていることに気付いており、「もしや、すでに最後のゲームをしてしまったのだろうか」と考える。自分に「あと何回の秋が残されているのだろう」とも思う。一見、良い施設での豊かな老後に見えるかもしれないが、皆それぞれに切実な思いを抱えている。そしてそれは、私たちの誰にとっても待ち受けているものなのだ。
それでも「人生では、よい日を数えるようにしなくては」と、クラブの面々は小気味良く活躍する。周囲や自らの衰えに向き合い、さまざまな別れも経験しながらも、毎日を前向きに生きて新たなことに目を向けられるところには、強さと明るさが感じられた。
できるならば自分もそんな風に年を取りたい、と思わせてくれる。いや、殺人事件には遭遇しなくていいけれど。
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