月姫の後悔
攫われて月の国から一時的にでも連れ出された。
太陽の君は太陽の分体、月姫は月の分体として存在し誓約により身体を繋げて力のやり取りをしてからは常時細くて強力な繋がりができる。
月の国が月姫を失えばそれは文字通り月を失うのと同じで、私が攫われたあのとき月は消えたのだと言う。
伴侶として繋がりのできた私たちは片方を失うと力のバランスが崩れて存在が不安定になると言われている。
そしてあの時、肥大した彼の力は凄まじいものだった。間者たちを薙ぎ払い馬車から助けてくれた彼の表情は無で、ああ、苦しんでいるのだと一目で分かるほどで。
私は無事だと助けてくれてありがとうと抱きつき漏れ出た彼の力を私へと吸収したが一瞬でも伴侶を失うかもしれない恐怖を彼に与えてしまったのだという罪悪感が私を満たした。
国へ戻れば忽然と姿を消した月も普通に空に戻っていた。彼にも少しずつ表情が戻ってきて、それでも抱えた私を決して手放さず、近付くものすら許さなかった。
月渡りをし寝殿に戻ればそのまま寝所へと連れていかれた。
半身を失う、そんな辛さと苦しみを味わった彼を全力で慰める私は彼は深く深く愛された。
さすがに1週間…10日?も外に出してもらえないとは思わなかったけれど私も彼を失い掛けたらきっと同じようにすると思えば責められなかった。