君をここに留めておきたい 

「この部屋どうしたの?」
お互いの部屋や寝室に近い場所に鍵付きの部屋が出来ていた。ついこの前までは物置にしていた部屋だ。時折、アルウェスは思い立ったように模様替えをする。
ついこの前、私の部屋に小さなキッチン作ったばかりだ。
「僕も君も外に出ると何かと注目されるだろ?」
「うん?」
「この前の夜会も仕立て屋が最高な腕を披露したおかげで、君は綺麗だったから」
「アルウェス、不機嫌だったから気に入らなかったのかと思った」
「とびきり綺麗だったよ。初めの時も言っただろう?」
「でもなんか雰囲気が硬かったもの」
「それは、会場の皆が君を見て視線を奪われていたから…見せるのが勿体なくて…」
「…うん?」
「どんな君も僕だけのものでいて欲しいんだ」
「アルウェスの為に着たのよ?仕立て屋のマダムがこれはアルウェスが喜ぶこと間違いないって言ってくれたもの」
「美しいし可愛らしいし君の魅力をこれでもかってふんだんに見せてくれたよ」
会話は成り立つのに、なんでか理解が出来ない単語ばかりだ。
「この部屋は宝物を詰め込もうと思って」
「宝物?」
「そう。たからもの」
熱を感じる程の視線に私は入らない方がいいのかと思い扉から離れようとしたら私の背に立ったアルウェスが包み込むようにドアノブに手をかけた。

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君をここに留めておきたい② 

入らないの?と、視線と同じような熱っぽい声が降りてくる。
何だこの雰囲気は?!と混乱する視界でアルウェスの手が扉を開く。
「この扉は僕と君しか開けられないから」
「私?」
「僕にとっては君がいないと意味がないからね」
それではまるで私が宝物と言っているようだと思ったが、きっと宝物の管理をする上で夫人の立場が必要ということだろう。
それならしっかりとアルウェスの宝物を守らなくては。
「わかったわ!」
「うん?」
「私もしっかり宝物を管理するし守るわ!」
「うん、よろしくね」
そう言ってアルウェスはそのまま私を抱き上げた。急な体勢の変化に「きゃっ」とアルウェスの首に抱きつく。
「入ってみようか」
「見せてくれるの?」
アルウェスの宝物を…
「君と入ると完成するんだ」

結局、アルウェスと入った部屋は至ってシンプルな内装に大きな出窓と他の部屋と少し違う作りの飾りや魔導書とは違う様々な本が沢山詰まった本棚、床に直接座っても身体が痛くならないラグ、少しだけ子供部屋?って思えるようなそんなワクワクの詰まったものだった。

君をここに留めておきたい③ 

想像していた宝物庫とは違っていて、でも、アルウェスはここは僕の宝箱って言うからそういうものなんだと思っていたら、そこで過ごす期間も長くなってきた頃、幸せを詰め合わせた宝物のような部屋だなとふと思ったことでアルウェスの言葉を理解して気恥ずかしくなってしばらくその部屋にはいけなくなって狼狽えたアルウェスに今更離婚とか言わないでよ?って血迷ったことを言われたりするのはまた別の話である。

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