水色髪のお姉さんの悩み
『少し好意をチラつかされただけでいい気にならない方がよろしいのよ?アルウェス様は女性には皆平等にお優しいのだから。自分だけが特別なんて思い上がらないで』
『心配しなくてもあいつ私には優しくないのでむしろ皆さんの方が好かれてますよ?たぶん』
昔から守ってくれていた。優しい人。
それでも他人に心配されなくても私は勘違いしたりしない。
『好きよ』
『僕も好きだよ』
そんなやり取りも起きたばかりで病み上がりの私への配慮とか、功労者への労りのひとつ。
私の好きと彼の好きが同じとも限らないわけだし。それに私は好きを伝えたあとのことを考えていなかったから、それでいい。
かつて咳が隣だったクラスメイトから、少し話をする機会の多い知人?友人?位までにはここ数ヶ月でなれたかもしれない。
それでも僕も好きと言われてからは、彼の様子が気になって仕方ない。
恋ってなんてままならないのだろう。
でも、彼に対して他の女性たちは本当によく努力をしている。
彼の周りの女の子たちは華やかで美しくて、可愛らしい。
私にはないものだけれど一朝一夕でどうにかなるものでもないから。
『本当に腹立たしい女!あなたなんていなくなればいいのよ!』
投げつけられたものが庇った腕に触れて気づいた時には目の前は真っ赤だった。
水色髪のお姉さんの悩み3
ナナリー・ヘルが失踪して10日がたった。
誰の目から見てもアルウェス・ロックマンの方が限界のように見えた。
しかし、相変わらず休むことはしない。捜索の範囲を他国にまで伸ばして様々なツテを利用し探し続けている。
どれほどの強靭な精神があろうとも、人はいつか限界が来るもので、少し休憩に立ち寄った公園でアルウェスはつなぎ止めていたものがプツリと切れる感覚を覚えた。
「ヘル…」
ここにはいない愛しいものの名を呼ぶ声には力がない。こんなに綺麗に人を隠せてしまうのか…と心がざわりざわりと音を立てる。
彼女生活圏に記憶探知だってしたのに何も見つからなかった。
「どこに行ったんだい」
「あるうぇす」
突然、聞こえた声に音が出るほどに反応し顔を向けた。
そこには探し求めていた水色を持った彼女に似た姿の小さい存在。
「ヘル…?」
思わず手を伸ばす。
その小さい存在はアルウェスの指にすり寄って来た。
再び「あるうぇす」と拙く呼ばれた。
彼女ではないけれど、彼女の魔力の塊で大凡、10日ぶりに触れる彼女の痕跡だった。
「君の本体はどこにいるの?動けない状態なのかい?」
「…?」
「君は君の本体の元へ案内できるかい?」
「?」
掌に乗せた愛しい人の欠片はアルウェスの問い掛けに答えなかった。