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氷の魔女は誰の手にも届かない 

美しい人だった。
記憶の中にしかいない彼女は確かに僕の生きる道を明るく照らしてくれた。
美しくて、明るくて、彼女の笑顔で世界が彩り光に満ちるようだった。
「約束…」
与えてくれたものは色褪せることもなく。
いつまでも鮮明に詳細にあの時のことを覚えてる。だからこそ、記憶のその女性瓜二つに近づいていく彼女が恐ろしかった。
あんなに切望した存在が、手に入れられないものだと、望むことすら考えもしないようにしたあの少女だと気づきたくなかった。
ひとたび、気づいてしまえば、僕は自由であることを望んでおきながら、閉じ込める算段をやめられないだろう。そして、ただ哀れな男の出来上がりだ。
笑顔を望みながら笑顔を奪う存在になるかもしれない。

それがただただ恐ろしかった。

彼女は易々と僕が手を伸ばすような存在ではないから。

空とはそういうものだから。

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