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『夜は歌う』(キム・ヨンス 橋本智保訳)
民生団事件をネタにした作品で、私もこの事件のことを知らなかったんだけど、主人公たちがめちゃくちゃ文学の教養があるので、世界の文学がポンポン引用されていくため、それを読んでいるのはすこぶる楽しい。彼らを取り巻く環境が、現実がシビアなのと対照的。

「いま思うと、出自の違う僕がいくら努力しても、貧しい農民の階級的正義を完璧に理解するなんてことはできなかった。もちろん頭ではよくわかっていた。だが、正義が実現するのをこの目で見守るのはやはりつらかった。この世界をトルストイとマルクスの世界に分けるとしたら、僕はトルストイ側に立つ人間だったからだ。言ってみれば、貧しい農民たちの階級的正義が実現するのを両目で開けて見られないのが、まさに統営で生まれ、日本の工業高校を卒業した僕自身の階級的な限界だった。」
主人公の、朝鮮人の中でも学を与えられ世界文学に触れられる世界が当たり前であるが故に、毎度「現実」に直面して苦しみ、ある時はアヘン中毒になる……。shinsensha.com/books/2878/

    

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