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パッと見はいけてない表紙だし、見落としてしまいそうな書名だけれど、試し読みを読んでもらえれば、熱量と切れ味がわかってもらえるのではないでしょうか。
あの『ラッセン論集』の仕掛け人による、論集的な何か。作品を見なければわからないこと、と、テキストや会話でしか伝わらないものの両方でアプローチしてくる正統派のスタイル。美術というもの全般に対する抵抗感がありながら、美術なるものが気になってしまう感覚、そのどちらも掬い取ろうという姿勢が根底にあるのが見て取れる気がします。
表紙や書名のニュアンスは、本文を読んだあとに再帰的に気がつくようにできているのかもしれません。強く自閉し、自己完結していることに気づきもしない世俗的な何かの素振りをする、高度にモダニスティックな、しかし高度にモダニスティックであるからこそ自閉に綻びがあるような、再帰的回路の自己解体後の静かな姿。メタ認知の欠如をこそ前面に浮かび上がらせる、メタ「メタ認知」的仕事。

とるにたらない美術 (ケンエレブックス) 電子書籍: 原田裕規: Kindleストア amazon.co.jp/o/ASIN/B0CPLKZR2L

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