ふと脈絡なく思い出したことですが、昔、実家から一関の親戚の家に行こうとすると、必ず中尊寺のそばを通ることになって、あのあたりの様子を車の中からいつも眺めていました。
あの頃は世界遺産とかの話が出るけっこう前で、中尊寺のある小山の脇を通ると、そこにはフツーの民家がいくつか建っていて、まるっきり生活の場になっていた感じがありました。その中には、かなり古い、それこそ戦後しばらくしたあたりに建ったような簡素な平屋の家みたいなのもいくつかあったと思います。
あの頃でも中尊寺はいちおうそれなりな観光地で、観光客向けの大きな駐車場や施設が建っていて、そういうところのすぐそばに、山の裾にぴったりとくっつくような位置にフツーの家が建っていたわけです。車の中からそういう風景を眺めていて、妙なアンバランス感を持ったわけですが、もちろんそれらの家はずっと前からそこにあって、後になって観光施設が建って、あからさまに観光地化したわけです。家には何の責任もない話。
その後、新しい道路ができて、中尊寺の脇を通るということはなくなり、あの風景があった場所を間近で見ることもなくなりました。あれらの家がどうなってしまったのか、たぶんもうだいぶ前に無くなってしまったのではないか、と思ったりします。他愛のない古い記憶の話。