心操くんのワンウィーク彼女②/心相+モブ女
「彼女?」
「違います、友達の知り合いです!」
「そうだとしても遅い時間だ、早めに切り上げてその子を送って行くように」
大戦後、平和になったと言っても夜道は危ないと心操くんに行けと促すと、すいませんと頭を下げて走っていく心操くんの姿を見送る。
「あ〜〜〜っ、人使ったらひどいんだから!」
いつのまにか呼び捨てにされてる事にこの子距離感おかしいのか?と思いながらモブ子の女子寮の門限を聞けばかなりギリギリで走るよとモブ子の手首を掴んで走り出す。その姿を相澤が見ていたとも知らず。
なんとか間に合うが女子寮総出でモブ子の彼氏???えーーー雄英じゃん!!!ヒーロー科ってマジだったの?!!!偏差値めっちゃ高いよね!!と女子の質問責めに遭う災難を経て、次の日も校門の前で待つモブ子。
「すいません……送ったら戻って……」
「戻らなくていい、俺も職員会議があるから」お前は肩肘張り過ぎてる所がある、たまにはゆっくりするようにと言われて焦燥感を感じるが話は以上と相澤は歩き出す。
「職員会議は1.2年担任のみダゼェ〜〜?相澤先生」
「知ってる、あと立ち聞きするな」
一部始終見ていたマイクがなんか不機嫌じゃね?と長年の付き合いからすぐに察する目敏い友人を無視して無言で立ち去っていく。
心操くんのワンウィーク彼女④/心相+モブ女
「先生!!!!」
校門をくぐった所でやっと追いついたと息を切らす心操くんと息一つ乱していない相澤。
「さっきのは誤解です!俺が好きなのは先……ッぐ…?!!!」
「お前はもう少し状況と場所を考えろ」
捕縛布で全身と口を塞がれた心操くんは息苦しさや恐怖より捕縛布についた先生の匂いに包まれる幸福感に力が抜ける。
ずるずると引きずられて人気のない森へ連れて行かれると解かれる。
「事情を聞かなくてもお前の態度や行動から概ね推測は出来た。だが、こうなったのは彼女に対して中途半端な行動や態度を取っているお前の責任だ」
「ッ……分かってます……」
「分かっていない。彼女を見捨てて俺に何を言いにきた?それも校内で誰が聞いているか分からない場所で愛でも叫ぶつもりだったのか?感情的に物事を押し進めようとして解決すると思ったのか?」
突きつけられる正論に何も言えない心操くんは相澤の教師としての人生を終わらせようとした軽率な行動に顔を青くして俯いてごめんなさい…と謝る。
そんな心操くんに謝れば……と言いかけた口を閉じる。
告げられた気持ちに対して返事もせず中途半端な関係のまま心操に我慢を強いている自分が説教出来る立場かと、ため息をつくと感情的になっているのは自分だと思い知る。
心操くんのワンウィーク彼女⑤終/心相+モブ女
女の子と並んでいる姿があまりにも様になっていて俺を好きじゃなかったのか?と卒業まで返事を先延ばしにしたのは自分なのに気持ちが変わってしまったのかと調べて、感情的になって大人げなく八つ当たり同然の説教をした自分が情けないと相澤はフー…と深呼吸をする。
好きだと返事出来ないのがこんなにももどかしいのかと我慢の限界だったのは相澤も同じだった。
呆れてため息をついたと勘違いした心操くんがビクッと反応をするので言いすぎたと俯いた顔を頬に触れて上げたら今にも泣きそうな顔をしている心操くんに問いかける。
「……俺の初めて、もういらないか?」
心操くんの行動は早かった。
校門にいたモブ子にきっぱりと君のことはこれっぽっちも好きじゃない、絶対好きになるな迷惑だ、二度とこんなことはするな、次は無視をする、諸々伝えたのちに目の前でLINEをブロック。
変な噂を流すようならそれなりの対応をさせてもらうと牽制もして軽い足取りで大好きな先生の元へ戻る。
翌日もモブ子は校門で待っていたが完全無視で遅れを取り戻そうと自主練に励んでいたら2.3日もしないうちにモブ子が来ることはなくなった。
先生の初めてを貰えるなら何もいらないと目を輝かせながら心操くんは毎日その時が来るのを待つ。
心操くんのワンウィーク彼女③/心相+モブ女
水曜日も木曜日も同じように校門で待つモブ女にうんざりする心操くん。
水曜日の朝に相澤からしばらく自主練でいいだろうと一週間分のメニュー表を渡された事で2人きりの時間が消え、相澤不足によりモブ子に苛立ちを感じていた。
「ねぇ、人使…聞いてる?今週の土曜日は水族館行って、日曜日はショッピング……」
「俺行かないよ、そもそも付き合ってないのに行く意味がわからない」
そう言うと泣き出したモブ子に好きでいいって言ったの人使だもん!!とどさくさに紛れて抱きついてきたモブ子を引き離そうと肩に手を置いた姿のままコンビニ袋を持った相澤と鉢合わせしてしまう。
「………我が校は生徒の自由を尊重しているが制服を着ている以上、目立つ行動は慎むように」
何あの汚いおっさん…キモ……と呟いたモブ子を引き剥がして先生!と角を曲がったらすでに消えている相澤に誤解を解かなきゃと焦るが、そんな必要あるのだろうかと立ちすくんでしまう。返事をすると言ったがそれは果たして良い返事ではない可能性が高い。無意味なんじゃないのかとネガティブな思考がぐちゃぐちゃになって心操くんを惑わすがそれでもたったひとつ『俺は先生が好き』という自分の気持ちは告白する前から一切変わっていないので伝えたいと走り出す。