なつやすみのおもいで
生家の薬屋は漢方薬の他に新薬も売っていたので、夏休みは小学生に目薬がよく売れた。ロートこども目薬は、流行のアニメキャラが貼られた目薬ケースが同梱されていて人気だった。
僕自身は親から「学校のプールで目薬なんか贅沢だ」と言われていて、もっぱら陳列棚にぶら下がった目薬ケースを眺めるだけだったが、秋になると余ったケースがもらえたので、そう不満でもなかった。(今考えればケースだけもらってもなんの意味もないのだが。)
次の夏が来て、新しいキャラクターのシールが貼られたケースが陳列されると、また目薬が売れていく。こちらから見ていると、ただシールを張り替えただけのものを、みんなが喜んで買っていくのがなんだかとても不思議で、なるほど商いというのはこういうものかとぼんやり感心していた。