以下、読後メモです。
セレステ・イングの最新作Our Missing Heartsを仕事で読んで感動し、私としてはかなり熱心にこの作品を推したのですが、通りませんでした。ならばこの作家の過去作品をどこかに売り込めないかと考えていた矢先、長編第1作の邦訳『秘密にし
ていたこと』が出ました。
第1作は、白人が大多数を占める町で暮らす中国系アメリカ人と白人の夫婦および3人の子供たちの生きづらさを5人が交互に語る、50年ほど前のアメリカを舞台とする人種差別がテーマの物語です。長女をじわじわと追い詰めることになる親子間の誤解、それぞれが胸に秘めて語らなかった思いが少しずつ明かされますが、謎が解明されるまでしんどい場面が続きます。
一方、Our Missing Heartsはやはり人種差別をテーマとする家族の物語ですが、こちらは近未来のアメリカを描いたディストピア小説です。アジア系に対するヘイトクライムや図書館や学校での禁書の問題など最新の話題にも触れ、社会に対する憤りが前面に出ています。母親が息子を守るため果敢に行動するところに、第1作にはない救いと希望を感じました。
私が訳せたらとは思いますが、報酬をもらって書いたレジュメをよそに売り込むわけにも行かないし、どこかから邦訳が出ることを願っています。