『エリザベート1878』観た

「象徴」で「美しく」「若く」あることの抑圧を脱ぎ捨てようとした、エリザベート40歳の1年間。原題はCorsage。「お飾り」ということかな。
ところどころ現代のものや音楽が入り込んできたり、創作が入ったりと、ポップと言ったらいいのか、軽やかさがありつつ、エリザベートがとにかくダルそうで疲れているのがとても良かった。中年の不機嫌さがいい。ずっとイラついて反抗し続けているけれど穏やかに見えるのは、この中年まで我慢し続けたダルさがあるからかも。ほんともう色々ダルいわ…というね。わかるわ。
でも、抵抗することや求めたいものを諦めない意欲、もしくは諦めきれなさも終始あって、それも良かった。
ラストの演出はおお…!と少し驚いたけれど、爽快感があって面白かった。

その歳になると、若く美しいですね、これからも若く美しくいてねという褒めも、そんな訳あるかよとウザくなるし、もう勘弁してくれ…となるんだなぁ、というのがよくわかる。彼女が美貌の価値をまだ内面化し続けもがいているのが苦しそうだった。
従兄弟との関係がひとつの幸福だと思うのだが、彼女はそこに満足を見いだせていない、女として見つめられることを望んでいるのも気の毒だった。

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『エリザベート1878』あと

彼女が夫や子供や従兄弟や負傷兵にまで、横に寝そべるのが印象的だった。同じ立ち位置でふれあいたいような気持ちの表れかな、と思って見ていた。親密さを共有したい表れというか。

動画の話が出てきて、そこに映る彼女の自由さが面白かった。動画に事実が映る的な台詞には、つい『フェイブルマンズ』を思い出したね。

彼女の奔放なわがままさも描いていて、子供との関係も面白かったし、侍女達とのやりとりも。一番の侍女にそれは酷い仕打ち…とは思ったが、ラストで女たちの繋がりの様なものが見えたのが好きだった。

ヴィッキー・クリープスが苛立ちから喜びから様々で些細な心の襞を表現するのを見る作品でもあって、それも楽しかったな。

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