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政治は名を正すことから始まる

 名が正しくなければ、言葉が現実の事態に順応しなくなる。言葉が事態に順応していなければ、人々は事実を認識できなくなるので、当然ながら、仕事はうまくいかなくなる。
 仕事がうまくいかなければ、人々の関係はおかしくなって、コミュニケーションが狂ってくる。そうなれば、どんな行事をやっても、つまらなくなる。そんな状態では、皆は保身に走り、本当のことを口にしなくなる。それでは誰が悪事を働いて、誰が正しいことをしているのか、さっぱりわからなくなる。
 そうなると、正しいフリをしている者が正しいとされるようになり、刑罰が当を得ないようになる。刑罰が当を得なければ、民は、いつ自分が陥れられるかわからないと感じるようになり、不安でどう行動していいかわからなくなる。こうなっては、組織も社会もおしまいなのだ。
 したがって、君子はものごとにふさわしい名を与え、どんな圧力にも屈せず、その言葉を必ず口にすべきなのだ。これを言葉にすれば、必ず事態が好転し、あるべきことが実現するものだ。君子は、その言葉を、いささかでもいい加減にすることがあってはならない。

安冨歩著「超訳論語」より

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