(続き)→ 描かれるのは、孫がいる年齢ながら逞しくも純朴な男性・良次郎から見た、大人達の社会。
序盤こそ良次郎と孫娘の交流などもありますが、次は一転、アイヌの彫刻家の話へ。
後半からは、沖縄戦で死んだ良次郎の兄を巡る旅が始まり、アイヌ兵を慰霊する「南北の塔」も登場します。
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著者の加藤多一氏は1934年北海道生まれ。
雄大な自然と子どもの触れ合い、反戦などをテーマに優れた児童向け小説を著しています。
兄を沖縄戦で亡くしており、本作の中で良次郎が抱く兄への哀悼や沖縄への悔恨は、著者自身の心情そのものでしょう。
北海道から沖縄戦を見つめた、稀有な一冊です。