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『同志少女よ、敵を撃て』
著/逢坂冬馬

圧倒的なスケールと検証で紡がれる、ソ連の女性狙撃兵たちの闘い。一応あらすじは知っていたけれど、戦場という極限状態のなかでうまれる物凄く濃密な女性たちの連帯《シスターフッド》の物語だった。戦うか、しからずば死か。主人公は戦うことを選んで生き延びる。終盤、選択の外にあったものに気づく展開が熱い。

登場人物ひとりひとりも個性豊かで魅力的、ラノベだったら速攻でアニメ化(豪華声優陣!美麗作画!迫力の戦闘シーン!)されただろうなとおもう。ていうかそのうちされるとおもう。

これはこの物語の良し悪しとは全く関係のない問題で、私はこの物語は女性と戦争についてかなり気をつけて書かれた話だとおもうけれど、誤読や曲解のリスクは常に発生するんだろうなと感じた。たとえば『この世界の片隅に』を見て「慎ましやかに暮らした戦時中の人は偉かった」という感想を抱く人が存在するように、『同志少女〜』を読んで「祖国のために銃を持って戦う女性たちの逞しさに感動」する人はいるわけで。だから、『火垂るの墓』みたいに嫌な気持ちになる作品って大事なんだなとおもった。

変な感想で申し訳ない。小説は本当に面白くて夢中で読み切った。でも私はその「面白さ」自体を危ういと感じているのかもしれない。

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