📙読書メモ:竹山道雄『ビルマの竪琴』1/n

南の方へ行って死んではないけど帰国しない人の二次創作を書いていたので、「そう言えば読んだことなかったな」と思って読んでみた。え、映画化している筈だけど、これどういう風な映画になっているんだ…?が最初の感想。

学校出たて音楽家の隊長に率いられる歌うのが好きな部隊がいて、ことに水島という兵士が音楽の才能に目覚めて自作の楽器で即興演奏しちゃうんだけど、どこかの村で村人に歓迎されているうちに部隊は敵軍に包囲され、すわ戦闘かというところでカモフラージュに歌っていた「埴生の宿」を相手も歌い返してきて、結局戦争が終わっていることが分かって捕虜になる。でも水島は終戦を信じないで頑張っている部隊の説得に赴いたままついに帰らない。一方、捕虜収容所の外には水島そっくりのビルマ僧がうろうろしていて…とミステリ仕立てで話は進み、最後は帰国の船でみんなが水島だったビルマ僧の手紙を読んで真相を知るのだけど、これ、構造が全く「名探偵明智と小林少年を悩ませる難事件!捜査線上に浮かび上ぶのは彼らが好感を抱いた謎の爽やか青年。全てが終わった後に届いた手紙に記された真相とは…」だよ。反戦小説だと先入観抱いていたけど、全然違った…!

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音楽家の隊長さん、水島がいなくなってすっかりしょげているのだけど(自分が行ってくれるかと依頼したから)、着々と推理を進める時にポイントとなるのが「あれは水島オリジナルの和音じゃないか」というのも音楽ミステリでもあり、隊長と水島だけにしか分からん世界みたいなことにもなっており、みずみずしい。

著者の後書きを読むと、実は著者はビルマには行ったことないらしく、台湾旅行の経験とビルマの写真集とかの情報だけで書いたらしい。びっくりだ。実際にビルマに行った人から「よく書けているけど果物の濃厚な匂いが感じられないのが物足りない」と評されたとか。
もう一つ驚きなのは、最初は中国の奥地の話として思い浮かんだのだが、中国だと敵味方双方が知っている共通の音楽がないから、「埴生の宿」「蛍の光」をやれる場所と相手→英領ビルマのイギリス軍だ!となって部隊がビルマになったらしいこと。創作上のネタの都合だったんだ…?!ビルマでの日本軍の惨状は、終戦当時はすぐには情報入って来ず、そちらが先ではなかったらしい。著者は教え子が出征して戦死している世代で、その慰霊の気持ちがあったとのこと。後書きにある、鎌倉の源実朝の墓がある洞窟で、実朝の墓の向かいに南洋群島で戦死した青年の白木の墓標が立ててあったというイメージが凄絶だった。

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