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音楽家の隊長さん、水島がいなくなってすっかりしょげているのだけど(自分が行ってくれるかと依頼したから)、着々と推理を進める時にポイントとなるのが「あれは水島オリジナルの和音じゃないか」というのも音楽ミステリでもあり、隊長と水島だけにしか分からん世界みたいなことにもなっており、みずみずしい。
著者の後書きを読むと、実は著者はビルマには行ったことないらしく、台湾旅行の経験とビルマの写真集とかの情報だけで書いたらしい。びっくりだ。実際にビルマに行った人から「よく書けているけど果物の濃厚な匂いが感じられないのが物足りない」と評されたとか。
もう一つ驚きなのは、最初は中国の奥地の話として思い浮かんだのだが、中国だと敵味方双方が知っている共通の音楽がないから、「埴生の宿」「蛍の光」をやれる場所と相手→英領ビルマのイギリス軍だ!となって部隊がビルマになったらしいこと。創作上のネタの都合だったんだ…?!ビルマでの日本軍の惨状は、終戦当時はすぐには情報入って来ず、そちらが先ではなかったらしい。著者は教え子が出征して戦死している世代で、その慰霊の気持ちがあったとのこと。後書きにある、鎌倉の源実朝の墓がある洞窟で、実朝の墓の向かいに南洋群島で戦死した青年の白木の墓標が立ててあったというイメージが凄絶だった。