第3章 道徳的制約と国家〈なぜ付随制約なのか〉
・個人の権利の侵害を、最小化すべき目的関数ではなく、付随制約として捉えることは合理的なのだろうか? その理論的根拠はなにか?
・理論的根拠としてはカントの定言命法がある。(なお、厳密な意味での「他人を目的として利用してはいけない」ではなく、政治哲学においては「他人を特定の方法(主に物理的な攻撃)で利用してはならない」にのみ関心がある。)
・理論的根拠は上記のとおりであるが、その理論的根拠から付随制約として捉えることは正当化できるのか? たとえば、他のもっと広汎な権利侵害を防ぐためにある特定の権利侵害を許容することは、一見したところ、許されてもよいように思われる。
・しかしながら、「社会全体の善のために個人の権利を犠牲にする」といったところで、善を伴う社会的実態というものは存在しない。端的に、別の人の利益のためにある特定の人が犠牲になっており、その人はそれ以上の善を得ることはないのである。これはカント的定言命法に従う限り正当化できるものではない。
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