バス・ドゥヴォス『Here』。早くも今年の俺の本命候補。
最後30分の男と女のシーンの素晴らしさ。
2人で歩くシーンも、キャメラ位置がシーンによって前から、後ろから、横からと変わる。予期せぬフレームインとフレームアウトで一人になったり二人になったり。
おそらく、2人で並んで歩くカットは一つもなかったんじゃないかな。この2人は手も触れない。
不意に立ち止まり、木の根元をルーペで覗き込んでいるシュシュに、後からきたシュテファンが彼女の後ろから覗き込もうとして「近すぎ」と嗜められるシーンのおかしさ。
最後に、彼が彼女に手を貸して2人が立ち上がり、2人の足だけのカットでドキドキしていると、「聞いて」というシュシュの声から街灯に雨が降り出すカットに移る。すごくいい。この2人、本当に名前も聞いてないのか?
雨の夜の中華レストランで、シュシュがこちらを向き、シュテファンが背中を向け、奥のおばさんが横顔を見せているカットや、兄と姉が話す夜のレストランで、窓越しのネオンが矢印のようにシュテファンに向いているカット。音の設計度の高さもそうだけど、すごく計算された16ミリ撮影にも驚かされる。他の作品も是非上映されてほしい。