【配信後記・2023年8月11日】
叙事詩てんこもりの回でした。
ホメロスの『イリアス』(エミリー・ウィルソンの新英訳が待ち遠しい一冊!)に加え、ロシアの『ブィリーナ』(筒井康隆の『イリヤ・ムウロメツ』とあわせて読みたい)やフランスの『ローランの歌』も登場しました。
中の人は、はずかしながらホメロス以外は未読なのですが、この機会に『ブィリーナ』と『ローランの歌』をそれぞれ読んでみようと思いました。
あと、ダブリンの悪名高き「尖塔」に対して、地元の人たちが放ったブラック・ジョークをキャロルが紹介した部分もとても楽しいものでした。個人的には「pin in the bin」がお気に入りです。
ユーモアが光る一方で、ジャガイモ飢饉や貧しい老婆(Shan Van Vocht)が厳かに扱われたページでもあり、敬意を払うべきところには最大限の敬意を払うジョイスの作家としての礼節・品位が伝わってきました。
『ユリシーズ』でスティーヴンは歴史を「悪夢」に喩えていますが、日本が原爆投下の日や終戦記念日をむかえる昨今、悲惨な歴史をどう記憶に留めるべきかという問題を考える上でも、フィネガンズ・ウェイクは他の作品にない独特の切り口を与えてくれると思います。