Museyroom(博茸館)に出てくるjinnies(柳瀬訳では「妖ニー」)の正体について、頼れる研究が意外なほど少ないです。Campbell&Robinsonの古い解釈をそのまま前提とした議論が多すぎます。雌ロバ(jenny)だとする説も、戦地にロバがいるという設定が信憑性に欠けますし、ナポレオンの「連隊の娘」だという説もジョイスの手書きの地図に無理矢理Campbell&Robinsonの解釈を当てはめただけのように思います。
一つ面白い解釈としては、イギリス民話に登場する川の悪魔「Jenny Greenteeth」があります。『ウェイク』にはふさわしい参照先ですが、しかしワーテルローの戦いとの関連性はあまりありません。
というわけで、jinniesが誰・何なのかという問題は、次回の大きなテーマになりそうです。