(洋三)大学生の三井さんが部の飲み会で「高校の時、彼女とかいなかったの」と聞かれる。自分で答えるより前に酔った後輩が「いません!三井先輩は硬派なんだから」と割って入る。「どこポジの発言だよ」「お前の妄想だろ」とチームメイトが話すのに笑って、「まあいなかったけどよ。部活忙しかったし、怪我してそれどころじゃなかった時期長いし」と言う。後輩は嬉しそうに肩を組んでくる。「ね!?怪我からの復帰とかまじ尊敬なんで。そこに優しい彼女とかいたら、なんかがっかりっていうか」「ひがみやめろ」「こいつ高校寮生活だっけ」「いつまで高校ひきずる気だよ。誰か合コンセッティングしてやれば」「やめてくださいよお、女子怖い!」「こじらせてんじゃねーよ」とワイワイする。三井さんも笑う。
飲み会の後、自宅に戻って頭がモヤモヤするので水を飲む。シャワーを浴びる。柔軟をする。モヤモヤが晴れなくて、時計を見る。しっかり夜中で、3コールだけ、と思いながら通話ボタンを押す。ベッドに座って壁に寄りかかりながらコール音を聞いていると「もしもし」と静かな声がする。